156人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヘル…」
切なそうに目を向けた彼女をヘルは抱き締めた。
「ごめん、海里。
勝手な自分の快楽のために、利用してごめん。」
「それこそ違うわ、ヘル。」
彼女は彼から離れて目を見ながら言った。
「私が勝手に貴方と契約を結んだのよ。貴方は悪くない。利用されてるなんて思ったこともない。
ただ私は貴方を救いたいだけ……でも、全然だめね。」
そう言って海里は軽く視線を落とした。
「どうしてそこまで俺を救おうとするんだ?」
この問いはいつも心の中にあった。
俺みたいな腐った人間…いや化物をどうして彼女は救おうとしてるのか。
彼女の答えはいつも「秘密よ」だった。
だからこの時も彼女の答えは一緒だと思った。
思ってたのに…。
ゆっくりと顔を上げて彼女は俺の頬に触れながら言った。
「貴方の瞳が、助けてって言ってるからよ。」
え?
そう思った瞬間、いきなり瞼が重くなった。
意識が朦朧として周りの景色が徐々に歪んでいく。
視界が狭まる中で最後に見えたのは、哀しそうな彼女の顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!