9.

6/15
前へ
/174ページ
次へ
「それにしても、スーツを着ろってどういうことだろ…偉い人でも来るのか…?」 黒いジャケットを羽織って全身を黒に染める。 昔はスーツを着ても似合わなかったな… というか着たくなかった。 ネクタイなんて首が苦しいだけだし、ジャケットを羽織ると動きが抑制される。 そういうのは大嫌いだった。 リョウに逆らえなくて渋々着たけど、嫌いなのは今でも変わらない。 縛られるのはごめんだ。 でも、後のことを考えると反抗もできない。 今はそのスーツもすっかり様になっている。 「難儀だな。」 ぼそりと不満を呟いてみたが、部屋に反響して余計虚しくなるだけだった。 サキは鏡の中の自分を見つめた。 ふと焦点を合わせると、机の上にリボルバーが置いてあるのに気が付いた。 振り返って数秒それを見つめる。 そして机に近付き手に取った。 黒光りするそれをじっくり眺める。 小さいけれど残酷な兵器。 これによって何人の命が闇に葬り去られたのだろう。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加