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「それにしても、スーツを着ろってどういうことだろ…偉い人でも来るのか…?」
黒いジャケットを羽織って全身を黒に染める。
昔はスーツを着ても似合わなかったな…
というか着たくなかった。
ネクタイなんて首が苦しいだけだし、ジャケットを羽織ると動きが抑制される。
そういうのは大嫌いだった。
リョウに逆らえなくて渋々着たけど、嫌いなのは今でも変わらない。
縛られるのはごめんだ。
でも、後のことを考えると反抗もできない。
今はそのスーツもすっかり様になっている。
「難儀だな。」
ぼそりと不満を呟いてみたが、部屋に反響して余計虚しくなるだけだった。
サキは鏡の中の自分を見つめた。
ふと焦点を合わせると、机の上にリボルバーが置いてあるのに気が付いた。
振り返って数秒それを見つめる。
そして机に近付き手に取った。
黒光りするそれをじっくり眺める。
小さいけれど残酷な兵器。
これによって何人の命が闇に葬り去られたのだろう。
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