9.

7/15
前へ
/174ページ
次へ
サキはリボルバーを鏡に向かって構えた。 体は微動だにせず、鏡に映った自分の額にまっすぐ銃口を向けた。 そしてさっき額に当てられた冷たいそれを思い出した。 仕事柄、銃口を向けられることはあまりない。 だから体がざわざわして、自分が死に直面している感覚を味わったようで、逆に冷静になった。 自分の状況を客観的に見るように思考が引いていった。 不思議な感じだ。 カンザキの行動は昔から訳がわからないときがある。 きっと暇だったから構いにきただけだろう。 少しバカバカしくなって、サキはふっと小さく笑った。 時計を見ると12時5分前だった。 ゆっくりとリボルバーを下ろしてまたそれを眺めた。 「サキ、準備できたか?」 噂をすれば影。 サキはリボルバーを机の上に戻すと黙って扉を開けた。 カンザキは白いスーツを着ていた。 そしていつものオールバック。 自分の部屋に鍵を閉めてくるりと振り返る。 「カンザキさんのあほ。」 そう言い放ちサキはボスの部屋へと歩き出した。 「うわ傷つくわー。いきなりなんだよ。」 少しも傷ついただなんて思ってない口調。 そういうとこがムカつく。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

156人が本棚に入れています
本棚に追加