9.

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サキは何も言わず前を見ていた。 どうか視線が合いませんように…と普段はしない神頼みをする。 しかし、それも虚しくボスの視線はサキと絡み合った。 お互いが目を離さず数秒見つめ合う。 その表情から何を考えているのか読み取ろうとじっと目を見たが、アリヤのようにはできなかった。 そのアリヤがサキの心を読み取るように沈黙を破った。 「ボス、会わせたい人物って誰なんですか?」 「あぁ、もうすぐ来る。」 ボスはサキから視線をはずした。 そっとアリヤを盗み見ると彼はサキに向かって小さくウインクをした。 ありがたい…けどなんだかなぁ…… というこの心の呟きも聞こえているのだろうか。 本当に不思議な奴だ…サキが1人で葛藤しているとコンコンと扉を叩く音が聞こえてきた。 「入れ、モガミ。」 「失礼します。」 “モガミ”と呼ばれて入ってきたその男は、丈の長い緑のジャンパーを羽織っていた。 黒い髪はボサボサだった。 全体的になんとなく古くさい感じの男だ。 ……ん?モガミ…? そのどこかで聞いたことのある名前と声にサキはギクリとした。 「どうもー、モガミです、よろしくー。」 ボスの横に立って振り返ったその男の顔を見て、サキは目を見開いた。
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