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僕は大切なことを忘れていた。
答えるには口を開かねばならず、そうすればハサミが……
落ちる。
鋭くて破壊力抜群のハサミだ。きっと真っ逆さまに地面を目指し、僕の膝スレスレを切り裂いて大地を突き刺し、そのまま躊躇うことなく地層を縦断して、マントルに消えるだろう。
忘れていればよかった!
ばかみたいに晴れやかな笑顔で、答を言ってしまえばよかったのだ。
もうだめだ。
どうにか方法が見つかれば、このハサミで両手の戒めを切れるかもしれないのだから。
今、このハサミを落とすわけにはいかない。
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