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死んで鬼になった陽は、二本の角を生やした水野という鬼に、「まずは適当にぶらついてみてください」と言われたので、言われるままにぶらつくことにしていた。
しかし特に行く宛てもなかった陽。その足は自然と毎日通っている学校に向かっていた。
陽は学校の正門から校舎に入っていき、階段を上り教室に入ろうとする。
「…ん?」
だが、陽は教室には入らず廊下のロッカーの後ろに隠れる。
何故隠たかというと、教室には日曜なのに人がいたからだ。
そいつは学生。
成績は学年一番、同じ「いいこちゃん」のあだ名を持つ陽のクラスメート。
月山 望(つきやまのぞむ)
(なんで休みの日にあいつは学校にいるんだ?)
陽が物影から様子を伺ってみると、月山はどうやら机を探っているようだった。
教科書でも忘れたのか?と陽が考えていると、「……あ、ヨッシャ!見つけた!」と月山が声をあげた。手には教科書を持っている。
「やっぱりか」
無意識で呟いてしまった陽は、言い終わったあとに後悔した。
(しまった声が出た……まぁでも大丈夫か。僕は死んでるから、普通の人には見えないし声も聞こえないはず……だ…し)
教室に沈黙が続く。
(なんで月山はこっちを見てるんだ?)
月山の両目の焦点は、キッチリ陽に合っていた。
こういう時、よく漫画では霊感を持ったやつがなぜかクラスに一人はいる。
「陽、お前どうしたんだ?今日は日曜日だぞ?」
(なんであいつは僕が僕だって分かるんだ?僕は鬼になったから頭には角があるはず……あれ、生えてない?)
月山の対応に驚く陽の頭に角は生えていなかった。
「……お~い。まさか本当に休みって気付かずに学校来たのか?」
「…そ、そんなわけないだろ!」
しょうがなくいつも通りの友達との会話をし始める陽。
「ハハッ、いやお前ならやるんじゃねぇの?だってお前頭より体が動く単純バカじゃん」
(……失礼な)
「お前はアレだ、きっと子供を助けようとしてトラックにひかれて死ぬな」
(しつれっ……当たってる。僕はそんな風に見られてたのか?)
「ところで…さ、月山は霊感とかあるのか?」
「なんだいきなり、そんなもん実際に見たことも聞いたこともないぞ?」
(……なんだ?こいつ)
「おっと俺はそろそろ帰るわ、じゃあな、また明日」
「…あ、あぁじゃあな」
月山は教科書を持って、帰っていった。
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