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「げ!」
陽が悲鳴にも似た声を出す。
それというのも20mほど先に、さっき陽が見送ったばかりの月山が歩いていたからだ。
「どうしよう。月山を追い抜けば、たぶん月山はアレに喰われるよな?」
後ろでは黒い怪物が大きく口を開けながら迫って来ている。
「……しょうがないか」
陽は走るのをやめた。そして向かってくる怪物に対して身構えた。怪物を受け止めるような形で。
陽の体が怪物とぶつかる。
「うがぁああぁあああぁあ!」
陽が余りの激痛に悲鳴をあげる。その痛みは激突による衝撃からくるものではない。陽が怪物に触れている箇所からまるで焼けているような激痛が襲うのだ。
激痛に襲われながらも陽は力一杯怪物を押し返す。
だが、それでも怪物はその速度を落とさずに月山に迫る。
「止まれぇぇぇぇ!」
肉体の限界が無い陽だが、床に踏ん張る足が滑って力がうまく入らない。
黒い塊はその速度を保ったまま、月山へと迫る。
止まらない。そう陽が思った時。
「なんだ、お前死んでたのか」
後ろから声が聞こえた。
「おいおいまだ角も生えてないんだから、黒には触らないほうがいいぞ?」
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