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痛みで頭がもうろうとしている陽に声が聞こえた。その声は陽の後ろから聞こえた。
(どこかで聞いたことがあるような気が……)
陽はそう思う。それもそのはずだ。
その声はついさっき聞いた、いい子ちゃんの声だったのだから。
いい子ちゃんこと月山は、陽と怪物との間に滑り込み、先程机から取り出した教科書に挟まれていた栞を引き抜く。
すると引き抜かれた栞が突如、日本刀に変わる。
月山の手に握られた白銀の刃は陽が押さえ付けている黒い怪物を、
真っ二つにたたっ斬った。
両断された黒い怪物はその身体を真っ黒な砂へと変え、風に散っていった。
「ふぅ……おい陽、大丈夫か?」
一瞬の出来事に呆然とする陽。
そんな陽にごく普通の態度で接してくる月山。
「お前……月山…だよな?」
陽の頭に真っ先に浮かんだのは疑問。
目の前にいる人物は本当に自分の知っているクラスメートなのかという疑問だった。
日本刀を一振りでまた栞に変え、教科書とは別の本に挟みながら月山は答えた。
「……あぁそうだよ。鬼さん」
何故この月山は自分が鬼だと知っているのかという疑問が新たに陽の頭に浮かぶ。
そして陽はこの二つの疑問が一変に解決する質問を口にする。
「お前は……いったい何者なんだ?」
この問い掛けに月山は、陽の想像よりもあっさりと答えた。
「俺は生き神さ」
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