~交差点~

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ここは駅前、いつも人がたえない場所。 ワイワイガヤガヤと人々の喋り声が耳につく。 「多分だけど、ここだよな?」 ため息をつきながら、スクランブル交差点の中心に立っているのは、まだ角が生えてない鬼。 陽だった。 ――さっき、学校の廊下でいきなり水野先輩から連絡があった 「駅前のスクランブル交差点に行ってください。そこで君にはやってもらうことがあります」 「定め……ってやつですか?」 「……行ってください、確かに伝えましたよ」 ――水野先輩からの話はこれだけだった。 その後、陽は言われた通り交差点の中心にやってきていた。 多くの人が歩いている中、なぜか誰も陽にはぶつからなかった。 陽の持つ火の玉の色が変わる。 「着きましたね?」 「はい……あの、これから一体何を?」 「それは……」 その声を聞き終える前に、火の玉が消えた。 色が変わったのではなく消えたのだ。 いや、言い方に少し間違いがあった。 火が消えたのでは無く火の玉の入ったビンが縦に割れたのだった。 (……なんで?) その理由は簡単だった。 目の前の黒い人間がいきなりビンを切り裂いたのだ。 「おぅわっ!」 その黒い人間の刃からは、皮一枚で斬られずにすんだ陽。 「な、なんだ!?」 陽の目の前に現れたのは頭から爪先までが真っ黒な人型の動く物体だった。 そんな黒い人間の両腕の肘から先の、普通なら手があるべき場所には30cm程の刃が備え付けられていた。 「オマエヲ……コロス」 刃の切っ先を陽に向け、その全身真っ黒な人の形をした物体が喋った。 (あぁ解ったこいつ黒だ、黒は鬼を狙うか) 陽は恐怖心と信号が点滅していたのとで、振り返って全力で歩道まで走る。 歩道までたどり着いた陽が後ろを振り返ると、トラックが黒の目の前まできていた。 「よし、ぶつかれ!」 黒はトラックにぶつかり、跳ね飛ばされ、地面を転がる。 あの時の陽のように。 「何……だ…この感…じ」 心臓の鼓動が陽の頭に響く。 『ドクンッ』 (体が熱くなる) 『ドクンッドクンッ』 (頭が痛い) 『ドクンッドクンッドクンッ』 (わっ、割れる) 「ガアアアァアアァアアアァ」
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