~交差点~

3/5
前へ
/90ページ
次へ
交差点の中心では、車に跳ねられた黒が起き上がった。 「ギギ、イタイ、イタイィィ」 黒は体中で叫んだ、まるで体中に口があるかのように。 「コ…ロス、コロス、コロス、コロス、コロス!!」 黒の叫び声。もし聞こえていたなら間違いなく駅前にいた人達全員に届いていただろう。 今、駅前の交差点に平然と立っていたのは一人の鬼だった。 交差点の中心にいる、両手が刀のような黒い怪物を相手に、堂々と立っていたのは…頭に真紅の角を生やした鬼だった。 信号が青に変わり、人が交差点にゾロゾロと入って来る。 「コロシテヤルゥゥ」 黒が両腕の刃で陽に斬りかかった。 その斬撃を陽は自分の左手で受け止める。 ガキャッという石と石を擦り合わせたような音が響く。 赤黒く変色した陽の体。 その体に黒の腕の刃では傷ひとつ付けることはできなかった。 「アガガ?」 戸惑う黒。 そして陽の反撃。それはいたってシンプルなものだった。 自由な右手で黒の腹を思いきり殴り飛ばす、ただそれだけ。 だが、その威力で黒は体を2・3m程浮かし、コンクリートの地面に転がった。 「アガガ……ナンダ、ナンナンダ?」 黒はよろめきながら立ち上がり、陽の方を見る。 しかし、黒が陽の姿を見ることは不可能だった。 見えたのは影だけだったのだから。 黒の目には陽の体は光り輝いて写っていた。 「これが、鬼の能力?」 陽の周りには、光り輝いているように見える球がいくつも浮いている。 その球はまるで… 「太陽みたいだな」 自分の体から出てきた光球を、陽は黒に投げ付ける。 それが当然の様に。 すると黒の体の中に、球は吸い込まれていき、闇のように漆黒な黒の体は光り始めた。 「ギャアガアアァアァァアア」 光り輝く黒があげる断末魔。 その光と音が消えた時、黒い怪物は消えていた。 黒い砂だけを残して。  
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加