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「それじゃあな……あぁあと、その体じゃあしばらくは動けないだろうから。ゆっくり静養してろ」
「わかった…イテテッ」
上体を起こそうとしただけで陽の背中、腹、首、その他もろもろの箇所に電撃の様な痛みが走る。
(御礼を言わなきゃな)
「月山…ありがとうな」
痛みのために若干苦笑いにも見える笑みを浮かべて陽は言った。
「……おぅ、まぁ気にすんなお互い様だ」
陽とは視線を合わさずに、後ろを向いて片手を振りながら月山は病室から出ていった。
扉を閉め終わった月山。
その表情は普段の彼には決して見られない暗い影で覆われていた。
「……さてと、他人の世話より自分の仕事だ。ツケの清算ってな」
月山の言葉からは暗い何かが感じられた。
日が沈みかけている町へと向かって、月山は歩き出す。
その歩みはまるで一歩、一歩、地面があるのを確かめているかのような重々しい歩き方だった。
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