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「あいつには借りができたな」
月山が行った後、急にシンと静まり返る病室。
時間は午後6時。
太陽は地平線へと沈んでいき、空は暗くなって来ている。
(……静かだな)
夕焼けに照らし出された幻想的な静寂。
だが、そんな幻想は脆くもすぐにぶち壊された。
「陽くんっ!」
一人の来客者によって。
「ウワァッ。ビ、ビックリした~」
扉をノックも無しに開け放ち、ドタドタと部屋に侵入してきた人物。
それは慌てていたせいか黒淵眼鏡が斜めにズレている水野だった。
「あぁ、すいません。それより大丈夫ですか?あの時いきなり連絡が途切れて驚きましたよ、でもまぁ魑魅魍魎に襲われてこれくらいで済んだんですから、ラッキーでしたね。あぁその時に火の玉を無くしたそうだけど大丈夫です、新しいのを持ってきましたから」
「……ウプッ」
またもや繰り出された水野の通販番組のようなマシンガントーク。
案の定、陽は言葉に酔い気持ち悪くなる。
「……ちみもうりょう?」
水野の口から出てきた単語の濁流のなか、陽は自分の知らない単語があった事に気付く。
「えぇ、あの黒いやつのことですよ。あの生き神から聞いてません?」
「あぁ、そうだったんですか。だったら聞いてます。……て、水野さんはあいつが神って知ってたんですか?」
陽が聞くと水野はキョトンとした表情で答えた。
「えぇまぁ。生き神なんて彼以外はいないんじゃないかな?それくらい数が少ないから」
「……そうなんだ」
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