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「そういえば。やりましたね陽君」
「……あの、何がですか?」
見るからに嬉しそうな水野。
だが陽には何がなんだかわからない。
「いやいや、初めてにしてはなかなかですよ。15人なんて多人数」
「…15人? いったい何の話しをしているんです」
「さっきの交差点でのことですよ。君の能力で15人が倒れたんです」
「僕の能力で…人が倒れた?」
「えぇ、そうなんです…よ…っと」
ゴウッと音をたて、水野の持つ火の玉の色が変わった。
水野は少し陽から離れ、火の玉で会話を始める。
「なんだ?………………ッ!」
水野の表情が驚きと恐れを混ぜたようなものに変わる。
「……わかった」
水野は火の玉をしまい、陽の前まで移動した。
「水野さん、15人が倒れたってどういう事ですか。一体僕は何をしてしまったんですか?」
「……陽くん」
自分のせいで人が倒れたという事実を教えられ、パニック状態になる陽。
そんな陽の鳩尾に水野の拳が突き刺さる。
「ガハッ」
何がなんだかわからないまま陽の意識は遠退いていく。
「……すまない」
陽の意識が無くなる寸前、水野が申し訳なさそうに呟いた。
ガックリとベットに倒れる陽。
「今はこの事実の確認が最優先だ。もし本当に奴がこの町に出現するようなら……」
水野は自分の持っていたケースから紅蓮に燃え盛る炎の塊を取り出し、陽の額の少し上、つまり先程まで角が生えていた場所に丁寧に置いた。
「お願いしますね……先輩」
病室を出ていく水野。
向かう先はあの世。
たった今もたらされた情報の真偽の確認のために。
最も恐ろしく、抗うこともかなわない敵の存在の確認のため、水野渉は、青鬼は走る。
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