254人が本棚に入れています
本棚に追加
黒い砂で覆われて、真っ暗で、真っ黒な交差点に、今一筋の光がさしていた。
その光を見るやいなや、月山は慌てて護神具をしまい、光に向かって頭を下げた。
「おう、久しぶりだな大天使」
黄鬼は一筋の光に向かってそう言った。
すると、その光の中からは大きな白い羽と、純白のドレスを身にまとった美しい女性が現れた。
「お久しぶりです、獅子山 公英。(ししやま こうえい)お勤めご苦労様です」
その声はとても澄んだ声だった。
「いやいや、神の中で最高神の次にお偉い大天使様にそんな言葉をかけてもらえるとは光栄ですねぇ」
これ以上ないというぐらいに大袈裟な身振りにニタついた笑みを浮かべながら軽く頭を下げる獅子山。
「茶化すのはやめてくださいっ、あなたも閻魔大王の次に位の高い、三鬼のうちの一人ではないですか」
少し声を荒げ返答する大天使。
「そんなことより、この砂を早くかたしちまってくれよ」
足首の辺りまで積もっている、黒い砂を蹴りながら黄鬼が言った。
「……わかりました」
自分の調子をとり戻す大天使。
「……月山、用意を」
「はい」
ずっと頭を下げていた月山は、いきなり呼ばれながらも、待っていたように、両手を前に出す。
大天使と月山は、おもいきり手を打つ。
その音がやむと同時に、周囲からは風が巻き起こり、黒い砂は一つ残らず空に舞い上がっていく。
最初のコメントを投稿しよう!