~死んだらそのあと~

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「……ここは…?」 ここは陽がさっきまでゴミ掃除をしていた公園のベンチの上。 陽は眠っていたのだ。 陽が眠っている間に見ていた夢。 その夢の内容を陽は妙に鮮明に覚えていた。 鮮明に覚えていたからこそ、彼には今の自分の状況が理解できない。 「僕は…僕は死んで……鬼になったのか?」 陽が夢で聞かされた内容は、自分は死んで鬼になったという訳の分からない内容だったのだ。 訳が分からない。 理解できない。 事態が飲み込めない。 顔に浮かぶ汗を拭い、うなだれる陽。 「えぇ、その通りです」 そんな陽にスーツを身に纏い黒淵眼鏡をかけた男性が笑顔を浮かべながら話し掛けてきた。 (なんだ?この……人?) 顔を上げ、男を見た陽は強烈な不信感を抱く。 別に男が急に話し掛けてきたから不信感を抱いたわけではない。 陽が不信感を抱いた理由は、その男の頭に……乳白色の角が二本生えていたからだ。 「始めまして、陽君」 「あなたは……なんなんですか?」 この言葉に男は微笑みながら言う。 「君にとっての先輩ってところかな?」 何の? そう言おうとした陽の言葉を制して男は続ける。 「勿論、鬼としてのね」 「……鬼」 鬼とは何なのか?何故自分は鬼になったのか? そのような鬼という言葉に対する疑問は陽の頭の中には浮かばなかった。 なぜならその答えを陽は既に知っているからだ。 「う…あう……」 口から零れるのは戸惑い。 聞こうとした事の答えが次々と頭に浮かぶために、陽は言葉を紡げない。
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