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「相当混乱してるようだね。まぁ無理もない」
そう言うと、男はポケットの中から牛乳瓶程の大きさの瓶を取り出した。
「これから君にはコレを携帯してもらいます」
その瓶の中では青白く光る火の玉がふよふよと浮かんでいる。
「見ての通り、火の玉です。
この火の玉は君と連絡をとるための……まぁ携帯と同じような物だと考えて下さい」
陽は瓶を受け取り、中の火の玉をよく覗き込んだ。
火の玉は瓶の中で浮いていて、青白い以外は普通の炎のように見えた。
「悪いね、何せ地獄と交信できる手段はコレしかないものだからさ」
「地獄……夢でも出てきました」
「うん、地獄とは閻魔大王様のいる、掟を破りし者達の場所のこと」
「……掟」
陽の眉間に深いしわが刻まれる。
目の前にいる自分の先輩と名乗る鬼を見て陽は思った。
「あなたは…どれくらい鬼をやってるんですか?」
すると男は少し考え込み言った。
「……ざっと五十年ぐらいですかね。いや、死ぬときに全財産を育児施設に寄付なんてしたもんだから、物凄い量の善行を重ねちゃって参りましたよ」
「…五十年?」
目の前の男の外見は、どう多く見積もっても二十歳そこそこの青年だった。
男は『なんで驚いてるんだろう?』といったような表情をしたあと、納得したような顔で大きく息を吸った後、口を開いた。
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