61人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、自殺や事故を気にしてはいられなくなった。
それだけ、この路線での自殺、事故は多かった。
もうそれは何かに憑かれているかの様に人が死んでいくのだ。
最初の内は俺もこの新人と同じで跳ねられ、飛び散った死体の片付けに恐怖を覚え、死者に対する弔意の念もあった。
しかし、長年の勤務に渡ってそれが続き、自殺の名所等と騒がれる内にそれも薄れ、いつしか俺の中で死体はマグロとなっていた。
遠くに微かに光が見えた。
「おい、気を付けろ。跳ねた最終電車が通るぞ」
事故とは云え最終電車だ。乗客の事を考えるといつまでも電車を停めておくことは出来ない。
線路の脇に避け進む。
電車が勢いよく通過して行った。
今の電車に死体の一部が絡まってる場合もある。
途中の線路脇に在るプレハブ倉庫から、トング(ゴミを拾うハサミ)とバケツを取り進む。
「新人、あれを見ろ」
ライトを向けたその先に小さな肉片が転がっていた。
「取り敢えず、お前が拾ってみろ」
硬直している新人。
「ビビってないで早くやれ」
ギクシャクと動き、トングで肉片を挟みバケツに入れる瞬間、新人はバケツに吐いた。
「あぁ仕方ねえなぁ。お前がバケツにもどしてどうする」
最初のコメントを投稿しよう!