最終電車

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しかし、自殺や事故を気にしてはいられなくなった。 それだけ、この路線での自殺、事故は多かった。 もうそれは何かに憑かれているかの様に人が死んでいくのだ。 最初の内は俺もこの新人と同じで跳ねられ、飛び散った死体の片付けに恐怖を覚え、死者に対する弔意の念もあった。 しかし、長年の勤務に渡ってそれが続き、自殺の名所等と騒がれる内にそれも薄れ、いつしか俺の中で死体はマグロとなっていた。 遠くに微かに光が見えた。 「おい、気を付けろ。跳ねた最終電車が通るぞ」 事故とは云え最終電車だ。乗客の事を考えるといつまでも電車を停めておくことは出来ない。 線路の脇に避け進む。 電車が勢いよく通過して行った。 今の電車に死体の一部が絡まってる場合もある。 途中の線路脇に在るプレハブ倉庫から、トング(ゴミを拾うハサミ)とバケツを取り進む。 「新人、あれを見ろ」 ライトを向けたその先に小さな肉片が転がっていた。 「取り敢えず、お前が拾ってみろ」 硬直している新人。 「ビビってないで早くやれ」 ギクシャクと動き、トングで肉片を挟みバケツに入れる瞬間、新人はバケツに吐いた。 「あぁ仕方ねえなぁ。お前がバケツにもどしてどうする」
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