奇跡

3/54
446人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
ユノに握られた右手を見ながらしばらく呆然としました。 会場からはファン達の歓声や彼らの声・歌声が聞こえてきました。 普段の私なら耳を傾け少しでもたくさん聞こうとしますが、今の私はそれよりユノに握られた右手のほうが大事。 どれくらい時間がたったのでしょうか。尻餅をついたお尻と腰からズキンと痛みが走りました。 「ちょっと!そこで何してるんですか?」 スタッフらしき人は慌てて駆け込んできました。 「ここは部外者進入禁止区域ですよ!どうやって入ってきたんですか!」 怒りをあらわにするスタッフ。 申し訳ない表情をしながら立ち上がりました。 お尻と腰からの痛みが一気にひどくなりました。 「いたっ・・・。」 力がぬける。 「すみません。どうやって入ったか、自分でも分からないんですが、さっきユンホさんとぶつかって・・・。」 「そんな嘘は通りませんよ!早くここから出て下さい。」 スタッフに荒く腕を引っ張られました。 無理やり立たされ、追い出されそうになる私。 でもお尻と腰が痛くてまともに歩けません。 「本当です。せめて痛みがひくまで待ってください。そしたらちゃんと出ますから。」 スタッフに負けじまいとだだをこねる子供のように腰をひき、体に力を入れました。 「何してる!」 出入り口の反対から声が聞こえました。 「部外者が入ってきたんで、今追い出すところです。」 スタッフは私を悪者状態に指差しました。 「ちゃんと歩けてない人を無理やり追い出そうとしないで下さい。」 大きな声で言いながら駆け込んで来たのはジュンスでした。 駆け込んできたジュンスはスタッフから私を離し、左腕を私の腰にまわし、私の右腕を自分の肩にかけました。頭一個分の身長差でななめに持ち上げられ、さらに腰に痛みが走りましたが、そんな事なんてどうでもいいです。 今はジュンスの腕の温もりが大事。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!