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「そうだ、メイ」
「なにかの?」
「もう、名前呼んでも良いんだよ」
少年の言葉に、メイは照れた笑みを浮かべながら、おずおずと名を口にする。
「漸く……呼べた……出会いから一年……漸く……」
「メイ……ごめんな……
今まで……淋しかっただろう?」
「うん……淋しかった……辛かった。
人の名なぞもはや呼ぶ事はないと思っておった……まして、それが愛情深く込めてなど……」
嬉しさと愛しさに、涙を零すメイ。
少年は、その美しい涙を指で拭い。
「今まで……誰が魔王の涙をなめただろうね……」
「ばか……そんなのかつてより今日に至るまで、アーチ……お主一人じゃ……」
「魔王の唇も……体も……愛も……」
「アーチ、お主が初めてじゃ……『魔王』の初めてを……全て――」
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