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――青年と娘は、そのまま宿をとった。
そして夜……メイの、魔王の力が高まる時間。
「アーチ、皿を用意してくれんかの」
「あいよー」
料理を楽しんでいた。
その様を、窓から離れた位置で覗き見る先刻の娘。
「……魔王メイリカル……
よくもぬけぬけと……」
「……彼女が憎いか?」
「……ええ、憎いわ……憎しみで……闇落ちしてしまいそう……」
青年は溜息を吐き、娘の頭を撫でる。
「だが、彼女のおかげでお前は、彼の英雄『大魔道師トリス・メギラオ』の力と記憶を失わずに済んでいるんだぞ、スー」
スーと呼ばれた娘は、それでも憎しみの灯る瞳でメイを追っていた――
「――どうしたメイ、身震いなんて……」
「うむ……何でも……」
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