彼の名は

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資料室に入ると、先程より幾分落ち着いたように見えるみくの姿があった。 木製のボロ椅子にちょこんと座っている。 「どーしたよ? あいつになんかされた?」 みくは俯いたまま、静かに頷いた。 「は? 本当に? 何されたの? 殺すよ?」 みくは瞳を伏せたまま、静かに語り始める。 「なんか……最初、引き止められて……懐かしいみたいな話色々されて……」 「うん」 相槌に促されるように、みくがようやく次の言葉を発する。 「当時から可愛いと思ってたとか、綺麗になったとか言われて……お金払うからご飯行こうって……」 「うわ……きも……。それで?」 「で、走って逃げた」 「ん?」 ハテナ顔の俺にみくが同じ台詞を繰り返す。 「走って逃げた」 「うん。まだ、何にもされてないって事な?」 俺の確認にみくはかぶりを振る。 またうっすらと涙を溜めている。 「……セクハラだもん」 みくの言わんとしていることはなんとなくわかったが、それと同時にデブ先生の事がちょっとだけ可哀相になった。 その台詞を吐いたのが俺なら、生徒に泣かれる事はないだろう。多分。  
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