彼の名は

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「逃げたなら、奴も少しは気付いただろうから。な? もしまたしつこくするようなら俺が言ってやるし……」 たしなめるように言うと、みくは俯いたまま「うん」と一応、納得した。 ……本当に授業が無くて良かった。 生徒ほったらかしで今、ここに居たなら情けなくて立ち直れなかったかもしれない。 ポケットから取り出した煙草を一本くわえ、火を点ける。 心が落ち着きを取り戻すのと同時に、ある疑問が脳裏に浮かぶ。 「ところでさ、あいつの名前、何だったっけ?」 俺の質問に、みくは唖然とする。 「フツー同僚の名前忘れる!?」 「いや、待て。違う。いっつもテキトーに呼んでるからさ。聞けばああ、そうだったって思い出すんだけど」 「油谷盛男(あぶらたにもりお)」 「違う」 「うちらの学年ではそう呼ばれてたもん」 「うー」 結局、二人で頭を捻っても名前が思い出される事は無かった。  
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