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職員室に戻り、奴のデスクを確認する。
「ああ……そうだった」
名前を思い出し、妙なすっきり感に浸っていると授業を終えた噂の人が戻ってきた。
「萩原先生。椎名みく、あれはいや、綺麗になりましたなあ!」
汗をだらだらと垂れ流しながら嬉しそうに語る姿を目の前にすると、みくが泣き出す気持ちもわからなくもない。
「あぁ、はい」
「アタックしちゃおっかなぁ~なんて。いや、これは冗談ですよ! 冗談!」
何が可笑しいのか、奴はうひひひと大爆笑した。
「あ~でも椎名さん生徒に質問責めにされて、彼氏いるって暴露してましたよ~」
「じょ、冗談だって言ってるでしょう!」
急に怒鳴り付けられ、言葉を失った。
職員室のあちこちから飛んでくる視線が痛い。
「全く、ギャグが通じないんだから萩原先生は~」
次の瞬間には、あはははは~と笑っていた。
こわ。
「すいません。先生みたくユーモアが無くて。ね? 湯谷森雄(ゆたにもりお)大先生!」
「何ですか? フルネームで呼んだりして」
「すいません。ちょっと呼んでみたかっただけです」
再び、あはははは~と笑うデブと、愛想笑いの俺。
湯谷森雄と油谷盛男。
みくさん。
君にニアピン賞を与えよう。
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