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『すまん』
心の中でそう答えた俺は、振り返らず、ペダルを漕いだ。
もし、その声が野太い男の声じゃなかったら、もしかしらたら振り返っていたかもしれない。
が、完全に“夢のない”声だった。
想像するに、同僚のつまらん家庭の愚痴話か、男子生徒のくだらん恋愛相談かなんかだ。
「逃げないで下さいよ!! ちょっと!」
「知るかっ」
俺は今日、早く帰って風呂入って、ちょっとだけゲームやって、寝るんだ。邪魔をするな。
声の主は特に追い掛けてくる様子もなかった。
勝った。
そう思った矢先。
「せーんせーい! 椎名みくとの事、バラしますよぉー!」
待て。
そう、俺が急ブレーキをかけたのは、言うまでもない。
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