先生、拉致される

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振り返ると、見知らぬスーツ姿の若い男がこっちに向かって走ってくる。 “見知らぬ”というか、正確には、なんか見たことあるような顔だけど、全く思い出せそうにない。 見つめ合う事、数十秒。 「えっと……まさか、先生覚えてないとか」 スーツの若造は頭を掻きながら尋ねる。 どうやら、知り合いらしい。 「すまん」 とりあえず、謝ってみる。 すると、男は遠い目で俺を見つめてきた。 「ふっつーにショックだし……」 その落ち込み具合から察するに、結構な知り合いらしい。 「あの……誰だっけ? 生徒?」 男の顔は次第に不機嫌そうに変化してゆく。 「……もういいです。とりあえず行きましょう」 「あ? 行く? どこに!?」 「飲みに行くんです。で、じっくり思い出して貰いますよ。俺の事」 「いや、無理! 今日は俺は家に帰って色々と……」 それに、知らない人についていっちゃいけませんってよく言うしな。 見つめ合う事、数十秒。 「バラしますよ?」 「ん? 何の事?」 「何の事か? さっきの聞こえなかったですかね? もっと大きな声で言った方が良かったかなぁ。……ねぇ、先生?」 誰だよこいつ。 しかも、何者だよ。 なんで知ってんだよ! 「さぁ、行きましょう先生」 「……あ~い」  
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