7807人が本棚に入れています
本棚に追加
親父狩りだな。きっと。
見知らぬ男と顔を突き合わせ、何故だか俺は駅前の居酒屋大手チェーン店に居た。
きっと、この男は俺のストーカーか何かで、みくとの関係に嫉妬して現れたに違いない。で、これから俺の事を取って食うに違いない。
でも、疲れた身体に注がれるビールが最高だからよしとするか。
「すいません、生」
通りかかった姉ちゃんを呼び止め、空のグラスを指差すと、目の前の男は呆れた、といった感じで目を細める。
「先生、ペース早いっすよ」
「お前のおごりだろ?」
男は溜め息を漏らす。
「別にいいっすけど、年上の独身なのにせこいっすね」
「結婚資金貯めてるから」
即答すると、男の顔は明らかに不機嫌そうに変わる。
絵に書いたような爽やか好青年。いかにもフレッシャーズみたいな、真新しいスーツ。歳は二十代前半だろう。
「いいからさ……、そろそろ本題に入れよ」
睨み付けると、男は真っ直ぐ俺を見て答える。
「塚本雄太です。覚えてませんか?」
最初のコメントを投稿しよう!