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「俺は四年前、先生のクラスの生徒でした」
四年前……?
って事は今の学校に就いた時だから、……あぁ、だから、みくのこと……。
「先生は生徒達の間ではカリスマで。……密かに憧れてたんです。先生みたいになれたらって。いや、先生を越えたいってのが正しいかな……。それで、教員目指して、実習とはいえ、ようやく一緒に働けると思って……まぁ、覚えられてもいなかったわけっすけどね」
「ふぅん」
「でも、先生は尊敬するような人物じゃなかったって事が今日よくわかりました。先生は……俺の宝物の一瀬七海のグラビア、没収して返してくれないような人だったこと、今思い出しました」
「あー……」
一瀬七海かぁ。懐かしい。
ん?
「あ」
もう一度、目の前の男に目を向ける。
茹で蛸みたいな顔色をした男は、ついさっきまで怒っていたのに、今度は泣きそうな顔をしている。
「……思い出したわ」
俺の一言に、塚本が目を見開く。
「は? 本当に? 何故急に!?」
「いや、お前と“七海”について分かち合った時間は忘れられんよ」
「今の今まで忘れてたのに!?」
「……やー、だって、あれから四年も経ってるし、“アノ”塚本がこんな好青年風になってると思わんし、まかり間違って教師になろうなんて思ってるとは……」
「いっちゃん、その発言、先生としてどーなの!?」
「お、それ、懐かしーわ」
“アノ”塚本かぁ。
なんだ……親父狩りじゃなくてよかった。
ん?
で、教育実習で……?
って事は……。
「いやぁ、でも、思い出してくれて良かったっす」
塚本はさっきまでと打って変わって、上機嫌だ。
「そうじゃないと話進まないっすからね」
「ん?」
「……俺、一瀬七海のグラビアの他にも、いっちゃんに奪われたものがあるんすよ」
なんか……嫌な予感が。
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