助走

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もう、すっかり膝もくるぶしも痛まない。 なんどかその場で軽く小さくジャンプする。 悪くないや。 リズムがすんなり体にはいってくる。 重さが、飛ぶたびに一旦空に消えて、着地と一緒に戻ってくる感触をたしかめる。 あいつに言うといつも、 「音楽なんてないじゃん。リズムってへんだよ」 とか言われんだよな。まったく。わかってねえよ。 わかってねえけど、説明できねーんだよな。 飛ぶ。着地する。繰り返し飛ぶ。 段々と、繰り返す。 呼吸とタイミングがあってくる。吐いて、飛ぶ。すいながら、着地。小刻みに呼吸すると、ジワジワと体に酸素が満ち、燃焼を待つ感覚がくる。 目を閉じる。 来た。 着地すると、一瞬ためを作って、爪先で蹴りだす。上から前へ。 前へ。
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