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酒が入ると、璃慧と佑貴は更に勢いがついたらしく、ふたりで勝手に盛り上がっている。
もう入り込めそうにない。
私の話し相手は必然的にシュウになるが、共通の話題なんてないし、何か振ってもリアクションが薄いので、間が持たず沈黙の度に、私はビールに口をつけ煙草も吸い過ぎた。
寝不足で消耗しているせいもあるけど、昼間の太陽の下でアルコールの回りは、普段よりも早い気がする。
私はふらついた足取りで、ひとりみんなから離れ、川の流れる側へ向かう。
コンクリートの川縁に腰を降ろして、素足を水につけるとヒンヤリと心地良さを感じるのは一瞬だけ。その冷たさに耐えられず、すぐに足を放す。
周囲に散らばった桜の花びらを集め、一枚ずつ水面の上に乗せると、それは不規則な列を成してユラユラと揺れながら、やがては流れの向こうに姿を消して見えなくなる。
何だか夢中になってしまい、私は手あたり次第に周囲の花びらを拾っては、ひたすら川に流しぼんやりと眺め続けていた。
どれだけ時間が経過したのか。
不意に素に戻って振り返ると、元の場所に人の姿はなく、何か白い塊のようなものだけが残されている。よく凝らして見ると横たわる白いパーカーのシュウだと分かった。
眠っているのかな?
当然だよね。
夕方に起きた私でさえ朦朧としてきているのに、普通の生活サイクルなら起きて24時以上が経つもの。
璃慧と佑貴はいつの間に、どこへ消えたんだろう。
たぶん‥さっきからふたりで何かコソコソ企んでいる様子だったし、シュウが眠ってしまったのを良いことに、ここから歩いてもそう遠くはない璃慧のアパートにでも行ったのだろう。
別に慌てることでもない。
置き去りにされたって帰りの交通手段には困らないし、以前にもこんなことはあったから。
合意のうえならふたりがどうなろうと構わないと思う。
ただ、別に引き止めたりしないから、逃げるようにしなくたって、ひとことぐらい言って行けばいいのに。
私は小さく溜息をついて、立ち上がりサンダルを履くと、スカートの汚れを軽く叩いて落とし、白い塊の元へと向かう。
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