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ひんやりとした風が頬を撫で、肩や腕や首の周りの寒さに身震いした私は、思わず体を縮ぢませて、体温を確保しようとする。
覚醒していく中で次第に違和感を覚え始める。
いつの間に眠ってしまったのか。
‥寒い。
ここは‥外?
そうだ。
シュウは?
慌てて起き上がり、彼の姿を探す。
西の空の果てで朱に燃える太陽は、川の水面にその炎を落とし込み、せせらぐままに揺れ動いている。
そのほとりにシュウの細い背中を見付けた私は安堵した‥のも束の間、罪悪感に苛まれる。
軽く2、3時間は眠っていたと思うんだ。
シュウがいつ目覚めたかは分からないけど、かなり長いこと待たせてしったに違いない。
申し訳ないことをした。
とにかく声を掛けて、直ぐにでも送らなくちゃ。
立ち上がった私の足下に、何かがパサッと落ちた。
それは、さっきまでシュウが着ていたはずのパーカー。
彼が眠っている私に掛けてくれたらしかった。
遠くに見えるシュウは、上半身タンクトップで、寒くないわけがない。
いくら昼間が暖かくても5月の夕暮れはまだ冷えるのだから。
私はシュウの背中に歩み寄り声を掛ける。
「ごめんね。知らないうちに寝ちゃったみたい」
「おはよう。よく寝たね」
振り返ったシュウはくったくのない笑顔を見せる。
「起こしてくれて構わなかったのに。寒かったでしょう。これ、有難う。着て?」
私は彼にパーカーを差し出す。
「寝起きなんだから着てなよ。何か気持ち良さそうだったから起こすに起こせなくてさ。退屈してないから気にしないで」
私たちは互いに起こし合うこと遠慮してしまったようだ。
「戻ろう。すぐに送るよ」
「お腹空かない?どこかでご飯でも食べようよ」
帰宅を促す私に、シュウの意外な誘いは嬉しかった。
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