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私はアルコールと一緒に食べ物を口にするのが苦手で、お酒を飲んでいるときには殆ど何も食べられなくなる。
だから昨夜クラブにいたときも、ここへ来て飲んだときも水分以外は胃に入れていない。
まともに食べたのは、ほぼ丸一日前ということになる。
それを思い出した途端、いきなり空腹を思い出したように、キュルルとお腹が鳴った。
「まだボーっとしてるだろ?僕が運転するよ」
私はシュウの言葉に甘えて、スターレットのキーを彼に渡す。
その車内、相変わらず会話は途切れがちだったが、私はもう沈黙に恐れを抱いてはいなかった。
まだ借りたまま羽織っているパーカーから、自分の洋服とは違う匂いがして、何だかくすぐったい感じがする。
シュウの自宅がある街の方面に向かいながら、円山にあるファミレスに到着したときには、既に真紺色の空に星が瞬き、常夜灯が燈っていた。
その深夜、不透明な闇に飲み込まれた部屋に、カチカチと時を刻む音だけが響いている。
時計の針はもう二時を回っていた。
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