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体はひどく疲れているのに、頭の芯が冴えて眠れず、さっきから寝返りばかりしている。
今夜、璃慧からの連絡はなかった。おそらく今もまだ、佑貴と一緒なのだと思う。
最初から佑貴が璃慧を目当てにしていることは気付いていた。態度があからさま過ぎたから。
璃慧はどうだろう。会ってすぐの相手を簡単に好きになったりはしないと思う。
好意?好奇心?
妥協?成り行き?
理解が及ばない。むしろ及ばなくていい。
だが、佑貴にはむしろ感謝したいぐらいだ。
あのまま4人でいたら、状況は今と違っただろう。
もしも璃慧に「私、シュウのことが気に入ったんだ」と先に告げられていたら、私はそれっきり彼女に譲ってしまったと思う。
そして諦め、シュウに対する関心を深めないよう用心して、なるべく接触を避け、気持ちを深める前の段階で静かに抹殺する。
傷つきたくないから。
過去、私が好意を寄せる相手が璃慧に夢中になることは度々あった。
それは淡い想いのまま壊れてしまうこともあれば、付き合っている恋人に「他に好きな人ができた」と打ち明けられたこともあって、その相手の女性が璃慧なのは、わざわざ確かめる必要もなかった。
何度、惨めで屈辱的な気分を味わったか知れない。
やがて私は感情を殺す術を身に着けた。
何の期待もせず、諦めることに慣れ、そして誰のことも好きにならない。
璃慧に悪意はない。彼女を恨むのは筋違いだ。
でも嫉妬してしまう。彼女には絶対に敵わないから。
私がこんな醜い感情を抱いていることを、本人には絶対に悟られてはいけない。
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