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今夜、シュウと一緒に過ごした時間、ふたりで食事をいる最中も、私はなかなか会話の糸口を見つけらずにいた。
どうでもいいような相手なら、適当に受け答えをしたり、聞き流すことができるのに。
シュウのことならどんな些細なことでも知りたかったが、考え過ぎるあまり何も聞けなくなって、ひとり空回りしていた気がする。
彼は退屈そうな素振りも見せずに、とりとめもない話に耳を傾け、きちんと受け答えをしてくれた。
だが、家族に関する話題だけはNGだったようだ。
シュウは中央区の一戸建てに、ひとりで暮らしているらしかったが、その家はもともとの彼の実家で、両親やきょうだいは別に住んでいるというのがどうも解せない私は、それ以上は立ち入るべきではないと分かっていにも関わらず、「淋しくないの?」など無意味なことを尋ねてしまった。
シュウはその質問に対して、「別に‥」とだけ答え、その後は何となく気まずい空気が流れた。
ちょっと複雑なのだと思う。
彼の家庭も、彼の心の中も。
私は無神経な質問をしてしまったことを、すぐさま後悔し、今後は触れないようにしようと思う。
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