プロローグ+長い夜に見た幻夢+

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私は仕事中に倒れ、意識を失ったまま救急車で病院に運ばれたようだ。 目覚めたときには病院の清潔なベッドの上に寝かされていて、自分がどこにいるのかも分からず、慌てて飛び起きた。 医者からは風邪と過労、そして軽い栄養失調だと告げられ、翌日には退院を許されたものの、自宅での絶対安静を言い渡された。 「あんた、このままだと死ぬよ」だって。 余計なお世話だ。 心の中で悪態をつきながらも、私は医者の言い付けを守って薬を飲み、ベッドの中でおとなしくしている。 忙しくしていれば、仕事のことで頭をいっぱいに出来るから、余計なことは何も考えなくても良くて、だから私は無理をしたのに、これじゃあまるで逆効果だ。 こうして有り余る時間の中で、過去の記憶を辿ってしまうのが嫌なんだ。 辛いことは、もうぜんぶ忘れたの。 悲しいことは、もう思い出さなくていいの。 いっそ記憶を失いたい。 それが無理なら、もう一度眠らせて。 体が不健康だと、心がネガティブになるから、いつもなら楽観的に済せられていたことにこだわってしまう。 鍵をかたく閉ざした心の扉から、今更になっても鮮明に愛しい日々が蘇る。
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