始まりの鐘が鳴る

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漆黒の闇の中、一軒の家の屋根にいる彼の赤い髪が映える。 夜ということもあり、冷たい風が頬を撫でる。 そんな中、静かな街に電話が鳴り響いた。 彼はそれに気付けば眉根を寄せ小さく息を吐く。 何回かコールが鳴ったあと、彼はやっとポケットに入る携帯へと手を伸ばす。 携帯を取り出せば折りたたみ式の携帯を開き、通話ボタンを押し耳にあてる。 「はい」 彼がそうとだけ答えれば電話の相手は落ち着いている彼とは違いどうやら興奮しているようで切羽詰まったように話し出す。 「今日の依頼をしたものなんですがどうでしょうか。本当にやっていただけたんですか。嘘じゃないですよね。本当にあいつは死んだんですよね」 『死んだ』 その単語を聞いても彼は顔色を変えることはしない。 嫌な顔をするどころか、口元に綺麗な弧を描き楽しんでいることを現す。 「えぇ。もちろん。貴方の依頼通りに」 大袈裟にところどころを強調して彼が言えば、電話の相手は電話越しでもわかるほど安堵の息を吐いた。 それに比べ彼は淡々とした口調で話す。 「報酬の方ですが…今から取りに行っても?」 「えぇどうぞ。たっぷりと用意してありますから」 先程よりは感情も落ち着いたようでそれと同時に声色や口調も変わる。 「では、お伺いさせていただきます」 ふと笑みをこぼし彼は携帯の電源ボタンを押した。 誰にとっての喜歌劇でもない。
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