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男は目を見開き我を忘れたように言葉を繰り返しながら後ろへ一歩ずつ下がっていく。
ベランダから部屋へと入る段差に躓けば尻餅をつき転んでしまうがすぐにはっとし彼を拒否するかのように両手を前に突き出す。
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」
その言葉を延々と繰り返す男に彼は呆れたように息を大きく吐けば、次の瞬間空に浮かぶ月のように口元に弧を描き腰に提げているものを抜く。
光に反射し光るそれに、男はさらに恐怖を覚えた。
「あぁ、痛いのが嫌なんですか?じゃぁ、こうすれば痛くありませんね」
その言葉と同時、延々と続いていた男の言葉は途切れる。
代わりに男の首からは血が延々と流れ出していた。
男の頭はといえば、胴体から1m程離れた場所に転がっている。
男の表情は、恐怖に怯えたものから変わってはいない。
彼は、男の頭と胴体を一瞥すれば綺麗な笑みを浮かべ頬についた血を右手の甲で拭う。
そして、男の頭と胴体を切り離したと思われる剣を血をはらうように一度振れば鞘におさめる。
一言残せば彼は再び闇の中にブーツの音を鳴らし屋根の上を走って行った。
「報酬、しっかりと頂きました」
ハッピーエンドでなんか終わらせてやらない。
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