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伊織と寄り道してたら帰りがいつもより遅くなってしまった。普段なら慌てて帰るが、今日は違う。両親が結婚記念日で夫婦水入らずで旅行に出かけたからだ。
鼻唄まじりで家路を歩く。
『ん?』
今、目の前を黒い影が横切った気がしたけど。きのせいかな…?
金木犀(キンモクセイ)の甘い香りが鼻をくすぐる。…少し肌寒い季節になってきた。
7時を少し過ぎた住宅地には不気味なほとの静けさがたたずんでいる。
やっぱりなんだか大きい影が外灯の下にある。
頼りない街灯がぽつりぽつり、遠目には影がなんなのか分からない。私は目を凝らして見てみた…。
犬…?
いや、すぐに自分の考えを否定した。
犬にしてはでかすぎる。
狼…?
その考えにたどりつきハッと息を呑んだ。
だが、私が息をのむより先に、その影は消えていた。
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