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「先ずは、二条にある『世界の下着専門店』か」
世界中の褌でも売ってんのかね?
「うむ、ならば行こうかの」
何だ、謙信がやけに嬉しそうな顔を見せてんな。
二人で歩く事30分程か。
人の往来が激しくなり始めた。
「ほらよ、謙信」
俺が差し延べた右手を黙って見つめる謙信。
「どうした?」
「いや、少し昔を思い出した」
「昔?」
「うむ、先程話した者に同じような事をされたからの」
幼少の頃の男の話しか。
「そうか、昔を思い出すのも構わねえが、今は俺の事を見てくれや」
「恥かしい台詞は禁止じゃ……よし、此所からなるだけ脚本通りにいくかの」
眩しい笑顔でそう言い、謙信は俺の右手を握ってくれた。
温かい手だな。
この温もり、昔も感じたような気がするが。
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