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広い屋敷の廊下を眼帯の男が左足を引きずりながら、歩いていた。
「ふう、歩くの一苦労じゃな」
ため息混り、独り言を呟く眼帯の男。
白髪混りの髪をオールバックにし、右に黒い眼帯を掛けた精嘆な顔付き初老の男。
「分国法を定めるとか言ってたが、馬鹿だから分からない事でもあったかの?」
悪態を付きながら歩き続け、ようやく一つの部屋の前に着いた。
部屋の前で、咳払いをし、声を出した。
「お館様、山本勘介、お呼びにより参上しました」
「おう、入ってくれ」
襖の向こうから聞こえる、若い男の声。
「では、失礼します」
襖を開き、中に居た男の姿に勘介の時が止まった。
木製の床の奥に置かれた二畳分の畳。
そこに座って俯いてる、黒く長いポニーテール姿の男。
手元には何かの光りが見える。
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