506人が本棚に入れています
本棚に追加
嵐の前の静けさ
「佐助、団子を頼む~」
「もう、だれっ放しだねぇ」
縁側に寝そべった旦那が、団子をねだってくる。
はだけた胸と腹には、魔王と戦った時の傷跡がまだ残っていて。
勿論俺様にも傷跡はあるわけだけれども、主君のそれは痛々しくて、申し訳なくて。
「佐助」
「ん?」
「風が心地良い」
「そうだね」
うっとりと目を細める旦那の髪が風に揺れた。
いつまでもこの時が続けばいいと思った。
どんなに願っても風のように無情に過ぎる時間が、どこか恨めしかった。
最初のコメントを投稿しよう!