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風の吹き荒れる摺上原に、旦那の好敵手は待ちわびていた。
「Ha…待ちくたびれたぜ、真田幸村」
独眼竜は、腕組みをして凛と座していた。
兜の眉庇(まびさし)の陰から、隻眼がギラリと光る。
「…申し訳ござらん、だが某も、政宗殿との決着の時を心待ちにしていたでござる」
馬から降り、旦那は独眼竜の元へと近づいて行く。小十郎と俺様だけが、その場に残った。
「テメェ…佐助と言ったな」
「猿飛佐助。アンタには名乗ってあげるよ。滝で会った時から随分気に入られたみたいだしね」
「…フン。」
小十郎の目は相変わらず険しい。だが、口元が微かに笑みを含んでいた。
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