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「テメェは……主君が負ける瞬間を見た事があるか?」
「俺様が稽古つけてたからね、毎日見てたよ」
「俺も、政宗様に剣を教えていたからな。負けて悔しがる顔は何度も見てきた」
何でこんな時にそんな話題を言い出したのか。
「…だが…主君が死ぬ瞬間は、家臣は遅かれ早かれ見届けなければいけねぇ……哀しくねぇか」
「……………」
「歯痒いと思わねぇか、戦う者を送り出す立場ってもんはよ…」
まるで三途の川の向こうに行ってしまったかのように、陽炎で旦那の姿が揺らいで見える。
俺様と旦那の間に見えない壁ができる。
(旦那、炎になりな……)
俺様は……
風はもう、あんたを送り出したから。
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