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元々旦那は元気の塊みたいな男だから、翌朝にはすっかり全快していた。 「……さ、佐助ぇ!?何で某、佐助の部屋に…」 「旦那が夜中に突然来たんでしょ、全く……俺がずっと介抱してたんだから」 旦那は夕べの出来事を覚えていないようで、眉間に皺を寄せて唸っている。 「う~む…確か某…お館様に初陣の話をされて………」 「…あー、もしかして旦那、焦ってた…?」 「そうかもしれぬ……」 旦那はもうじき17歳になる。大抵の武家の子はもう戦を経験している年頃なのに、旦那はまだ戦場を知らない。 そんな旦那に初陣の知らせが入って、焦燥感を煽られたんだろう。 「……気付いたら、いつもの何倍も槍を振るってしまって…」 「お馬鹿さん」 「なっ……?」 「俺は武士じゃないけど、これだけは知ってる………戦は冷静さを欠いた者から死ぬってな」 それは今まで自分が何度も経験してきた真理。焦りや惑いは死期を早める。
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