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初陣
「皆のもの、出陣じゃ!」
「おう!」
赤備えを身に纏った武田軍が、戦場を目指し歩を進める。
川中島。
お館様の宿命の好敵手と何度も戦ってきた場所だそうだ。
そして旦那の初陣。
(……………旦那?)
後方の警備をしていた俺様は、木をさくさくと飛び越えて、馬上の旦那のもとへ向かった。
「ちょっとちょっと、鐙から足外れてるよ旦那!」
「あ、そ、そうであるな!」
旦那は慌てて足を鐙に掛けようとするが、震えてなかなか掛からない。
カチャカチャともどかしい音が響く。
「旦那、冷静になって」
「分かっておる…」
「緊張し過ぎだって。ほら、旦那の昂ぶりが手綱を通じて馬にまで伝わってる」
旦那の乗ってる鹿毛の馬が、ビクビクと耳を伏せて怯えていた。
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