続・復元

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「ははーん。なるほどな。そういうことだったのか」 わずかな沈黙の後、不意にクロスが言葉を発する。 その言葉や口調から察するに、大方のことは今ので理解してくれたらしい。 「んじゃ、行くか」 そう言って、クロスは僕らの横を通り過ぎて歩き出した。 「へ? 聞かないの?」 思わず声が漏れる。 すると、歩みを止めて顔だけこちらに向けるクロス。 「何をだ?」 「何をって……何で記憶がないんだ? とか、お前は何者なんだ? とか……」 僕は何を言ってるんだろう。 それがわからないから記憶喪失なのに……。 「それがわからないから記憶喪失なんだろ……」 まったくです。 クロスは顔を正面に戻し、続きの言葉を紡ぐ。 「別にお前の過去なんて興味ねぇし」 うぐっ! 今の台詞は何か突き刺さったような感じがしたよ。 ちょっとぐらい興味を示してくれてもいいだろうに。 「それに、俺様は昔のお前を知らねぇんだ。記憶があろうがなかろうが関係ねぇ。大事なのはこれからだろ」 大事なのはこれから……か。 「クロス……」 彼の言葉を聞いた僕達は口を揃えてこう言った。 『よくそんなクサい台詞が言えるね』   「うるせぇっ!」 完全にお怒りになってしまったクロスはドカドカと1人で先に行ってしまう。 僕らは一度顔を見合わせて笑うと、急いで彼の後を追いかけた。  
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