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真っ黒な空にポツリと浮かぶ明るい月。
その光に照らされて、水の中は魚が見えるほど透き通り、湖の底は眩しいぐらいに輝いている。
そんな、この場所と同じぐらい綺麗な湖だった。
――僕は……あそこに行ったことがある……?
そうだ。確か誰かと一緒に。
そこで何か、何か大事なことを言ったんだ。
くそっ! 何で思い出せない。
折角ここまで思い出せたのに……。
「――ッド! クラッド!」
「っ!」
すぐ近くで聞こえたレナの大きな声。
その声で現実に意識が戻ると、目の前には心配そうなレナの顔があった。
「あっ、やっと気付いた」
「随分考え込んでいたようだな。心ここに在らずといった感じだったぞ」
2人は楽しそうに声を弾ませるが、僕の心は沈む一方。
結局思い出せなかったか。
「何考えてたの?」
「いや、何か思い出せそうだったんだけど……無理だったよ」
「……そっか」
僕の気持ちを察してくれたのか、レインはそれ以上口を開かなかった。
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