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しかしよく見ると、魔物の体が所々光っている。
おまけに動きもピタリと止まった。
よーく目を凝らせば、その光の正体が見えてくる。
「糸……?」
かろうじて見えた光の正体。それは壁の光を反射して煌めいていた細い糸だった。
レインは大鎌、ルミナは薙刀、クロスは銃。
となると、この糸を操っている人物は1人しかいない。
糸の伸びる先……つまり、出所に視線を動かす。
「正解」
僕の呟きが聞こえていたらしく、レナは僕に顔を向けてニカッと笑みを浮かべた。
その手の指先の爪から伸びる糸が緩まる様子はない。
「その程度の硬さじゃ私の糸は防げないよ」
レナが腕を引くと同時に、敵の体に巻き付いていた糸が消える。
いや、甲殻の内側に入り込んだ。
刹那、緑色の液体が噴き出したかと思うと、魔物の体を覆っていた甲殻が数ヵ所ずり落ちる。
剥き出しになる緑色に染まった柔らかそうな肉。
――鋼糸か。
グロテスクな光景を目の当たりにしながらも思考は働く。
ただの糸でさえ、使い方によっては圧力と摩擦で人の肉を切ることもできる。
恐らくレナは、糸に魔力を流すことで硬度を自在に変えることができるんだろう。
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