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ふと頭に浮かんだ名前を口にする。
その言葉が召喚キーとなり、それは現れた。
闇に溶け込むぐらい真っ黒な刀身。刃だけじゃなく、鍔も柄も同じ黒だ。
あの光景に映っていたものと同じ刀。
名を黒龍。
それが今、確かに僕の右手に握られていた。
「はぁっ!」
顔を上げると同時に振り下ろされたレインの大鎌を黒龍で受け流し、すぐさま切っ先を返して斬り上げる。
ほんの少し目を見開いたレインは後ろに跳んでそれを躱した。
驚きで唖然としているみんなを余所に、僕は腕に巻き付く糸を断ち切る。
捕縛目的のためあまり魔力を込めていなかったらしく、糸はあっさりと斬ることができた。
そこで改めて自身の手に握られている黒刀に視線を向ける。
不思議な感覚だ。これがあれば何でもできる気がする。
それはちょっと言い過ぎかな。
――これが僕の武器、黒龍……。
すごく懐かしい感じだ。
……振りたい。試したい。戦いたい。
心の奥底から闘志が溢れてくる。
「ゴメン、みんな。僕今、この刀を試してみたくて仕方がない」
だから……、と繋げて、誰に向けるでもなく黒龍を持ち上げた。
「続き、やろうよ」
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