動き出す歯車

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行っても自分達のことを覚えていない。 エレナに至ってはどれだけ悲しむことか……。 いっそ、無理矢理連れて帰れば……。 リオンはそんなことを考えてしまう。 ――だが、それでいいのか? 無理矢理連れ戻して、自分達のことを覚えていないまま自分達と過ごす。 それが本当に幸せと言えるだろうか? そう思うと、リオンの拳には自然と力が入る。 「大丈夫よ」 そんな彼を落ち着かせるように、フィアは優しい声で言葉を発した。 「アイツは絶対に帰ってくるわ。だって私の……自慢の弟だもの」 そう言って柔らかく微笑むフィア。 不思議とリオンの気持ちも落ち着いていく。 「時期を見て舞台は用意するわ。そこから先のことはあなた達に任せる。だから決して早まらないで」 他言無用。 フィアの視線にはそんな意味が込められていた。 それを読み取ったリオンは頷く。 「この事をあなたに話したのは、あの子達が何か行動を起こそうとした時にストッパーとして動いてもらうため。よろしくね」 会話が終了した雰囲気を察してソファーから腰を上げるリオン。 「……1つ訊いてもいいですか?」 けれど、疑問を訊ねるべく口を開く。 「何かしら?」 「情報源は誰なんです?」 再びクスッと笑うフィアはこう答えた。 「聖炎の断罪者よ」  
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