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でも、僕は諦めていない。
建物の陰から飛び出し、すでに見えなくなりつつある犯人を追いかける。
「クラッド!?」
その際2人の驚く声が聞こえたが、今は犯人を追う方が先だ。
何のアクションもなくあのスピード……。間違いなく風魔法。
それなら追えるのは僕しかいないじゃないか。
「【リーズウィンド】」
風の初級魔法を発動。
途端に身体が軽くなり、移動速度が速くなる。
道行く人を華麗に躱しながら進めば、犯人も僕の存在に気付いたみたいだ。
向こうは焦って判断を間違え人にぶつかる。
対する僕は着々と距離を縮める。
――これならいける!
そう確信した僕はぶつからないように注意しながらスピードを上げた。
それを見て路地裏に逃げ込む犯人。
「逃がさないよ」
小さく呟き、僕も後を追った。
右に左にと角を曲がり、少しずつ犯人に近付いていく。
そして数度目の角を曲がった時だった。
「らぁっ!」
突然ラリアット気味に振るわれた腕。
何とか両腕を滑り込ませて防いだものの、両足は宙を駆け、勢いよく背中から地面に落下した。
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